形成外科
形成外科では、大阪大学形成外科の医師が様々な症状に応じて対応させて頂きます。具体的には、皮膚に発生した腫瘍やできものの切除、縫合などを行っていきます。
腫瘍については、良性と悪性があります。悪性の場合は、他の部位に転移する、周囲の組織を破壊するなどのリスクがあります。また良性では、脂肪腫、粉瘤、ほくろなどがあります。悪性で切除が必要となれば、提携先の総合病院などを紹介いたします。当院では、良性の腫瘍を中心に治療を行っていきます。また良性は、放置でも問題のないケースもあります。ただ美容面で気になるという場合の切除も可能です。形態的なことでお悩みの方もお気軽にご受診ください。
このほか、やけど、ケロイド、手術創につきましても診療範囲となりますので、一度ご相談ください。
ほくろ
色素性母斑、あるいは母斑細胞母斑とも呼ばれます。母斑細胞の増殖によって起きるとされ、その大きさが1cm未満の場合にほくろと呼ばれます。1cm以上ある場合は黒あざと呼ぶこともあります。褐色や茶色、黒色など色はさまざま、形についても真っ平なものもあれば、いぼのように盛り上がるものもあります。
ほくろは先天性と後天性の2つのタイプがあります。先天性は生まれついて発生しているほくろです。この場合は、増えるということはありません。ただ後天性のほくろについては、過度に紫外線を浴びるなど外からの刺激によって色素細胞が異常を起こすことで発生すると言われています。したがって、増えていくリスクもあります。
基本的にほくろは良性腫瘍なので放置でも問題ありません。ただ皮膚がんの一種である悪性黒色腫と似ているので、区別がつかない場合は検査が必要です。この場合、ダーモスコピーや病理診断を行うなどして判定をつけていきます。
悪性黒色腫あるいは将来的に悪性黒色腫になる可能性が高い(大半は先天性)と判断されると手術による切除となります。単なるほくろと判断された場合でも見た目が気になるとなれば治療となります(自費診療)。
治療内容については、局所麻酔下でほくろやその周囲の一部組織をメスで切除し、縫合していく切除縫合法があります。またメスを使わない治療としては、炭酸ガスレーザーがあります。これは同レーザーを照射することでほくろを蒸散させる治療法です。治療時は、局所麻酔をするので痛みを感じません。またほくろ以外の皮膚のダメージもほぼ避けられるので出血も少ないです。
粉瘤
毛穴の上方部分に袋状の構造物が発生し、そこに皮脂やアカなどの老廃物が溜まっている状態が粉瘤です。この場合、溜まったままで排出されることはないので、徐々に大きくなっていきます。大きさは、数㎜~数㎝程度(最大で10㎝以上になることもあります)で、半球状に隆起する腫瘍が現れるようになります。その数は単発~複数程度もあれば、多発することもあります。
中央部に黒点がみられるのも特徴で、自覚症状はありません。ただこの粉瘤に何らかの原因で炎症が起きるようになると腫れや痛みがみられるようになります(炎症性粉瘤)。発症しやすい部位は、顔、首、耳介、背中、腕などの部位で、外傷がきっかけになることもあります。
治療につきましては、良性の腫瘍でもあることから、よほど大きくならない限りは除去する必要はないです。ただ根治させるためには手術療法が用いられます。この場合、局所麻酔下で袋状の構造物(嚢腫壁)ごと取り除く、あるいはくり抜き法と呼ばれる方法もあります。これは局所麻酔下で、粉瘤に向けて円筒状のメスを刺し込みます。その部分をくり抜くような形で袋状の構造物もできるだけ含まれるよう取り除きます。除去後は縫合をすることなく、開放性損傷の扱いで処置していきます。
炎症性粉瘤の場合は、腫れがひどくて膿が溜まっている場合に切開して、排膿していきます。また医師が必要と判断すれば抗菌薬も使用していきます。
やけど
熱傷とも呼ばれます。これは皮膚組織が高温によって損傷を受けている状態を言います。症状の程度によって治療内容は異なります。やけどは、熱湯がかかる、衣服に火がつく、さらに薬品や電流などによって発症するようになります。同疾患は、皮膚のどの部分にまで損傷が及んだかによって、1度熱傷、2度熱傷(浅達性、深達性)、3度熱傷に分けられます。
主な症状ですが、1度熱傷は表皮の部分で起きたやけどです。この場合は、皮膚は赤くなって腫れ、ヒリヒリした痛みも出ます。また2度熱傷は、真皮の層にまで達した熱傷になりますが、比較的浅ければ浅達性2度熱傷、真皮層の深い部分まで達していると判定されると深達性2度熱傷と診断されます。どちらにしても患部に水疱(水ぶくれが)が現れますが、前者は水疱の底が赤くなっているのに対し、後者の水疱の底は白くなっています。また2度熱傷からは瘢痕化しやすくなります。一番ひどい状態の3度熱傷は、真皮のさらに奥である皮下組織まで損傷を受けている状態です。神経まで損傷を受けているので痛みを感じませんが、炭化していたり、硬く乾燥した状態になっています。
治療に関してですが、1度熱傷ではステロイドの外用薬を使用していきます。2度熱傷では、まず感染予防のために水道水等で洗浄します。その後、ワセリンの塗布や創傷被覆材等を用いる治療となります。3度熱傷については、デブリドマンと呼ばれる厚くなった壊死組織を除去し、さらに植皮手術も行っていきます。
ケロイド
熱傷(やけど)などを含む外傷や手術時の傷等がきっかけとなって発症するのがケロイドです。この場合、傷が治っていく過程で、その部位が赤く腫れて隆起し、ミミズ腫れのような現象がみられるようになっていきます。この盛り上がりが傷の部分に限定しているのであれば肥厚性瘢痕、傷の部分以外でも皮膚の隆起がみられ、だんだん大きくなっていくのがケロイドです。主な症状ですが、かゆみもあれば、患部に触れると痛みを感じることもあります。
発症の原因については、膠原線維の生産過剰によって引き起こされるとしていますが、必ずしも起きるというものではありません。そのため遺伝的要因や体質などが関係しているのではないかとも言われています。なおケロイドがよくみられやすい部位は、耳たぶ、胸部、肩、腹部、背部等です。
ケロイドの治療では、保存治療と手術療法があります。前者で炎症を抑制するために使われるのがステロイド系の外用薬です。また、かゆみなどの症状については、トラニラストの服用となります。さらに皮膚の赤みや隆起については、ステロイドの局所注射を用いるなどします。手術療法については、瘢痕を引き金として拘縮(ひきつれ)が起きていると判断されると外科的治療(手術)による切除が検討されます。ただ術後に再発するリスクもあるので、放射線治療が必要なこともあります。
皮膚のできもの
皮膚の表面や皮下に発生した腫瘍やしこり等が皮膚のできものです。具体的には、ニキビ、粉瘤、おでき、いぼ、脂肪腫、ほくろなどが含まれます。
脂肪腫
良性腫瘍のひとつで、脂肪組織が増殖していくことで発生します。この場合、皮下組織でみられるケース(浅在性脂肪腫)、筋膜下で発生するケース(深在性脂肪腫)があります。どちらのタイプであっても脂肪の塊なので、脂肪腫自体は軟らかくなっています。原因については現時点では不明とされています。
主な症状ですが痛みなどはありません。大きさは数㎜~10㎝程度とバラついていて、単発が大半ですが、多発する可能性もあります。発症部位はさまざまですが、よくみられるのが肩、背部、臀部などです。患者さんに40~50代の女性が多いのも特徴です。
この脂肪腫は良性腫瘍でもあるので、日常生活に支障をきたさなければ経過観察でもかまいません。しかし、この腫瘍が大きくなって押すと痛む等の症状がある、見た目が気になって切除したいという場合は手術療法となります。この場合、局所麻酔下での脂肪種の摘出となります。切開しての取り出しとなるので、摘出後は切開した箇所を縫合して終了となります(術後1~2週間程度経過してから抜糸をします)。なお一度摘出すれば、再発することはほとんどありません。
手術創
手術によって発生した傷のことを手術創と言います。この手術創が治るまでには一定の期間が必要とされています。大まかな流れですが、縫合処置から3日程度は、赤い腫れや痛みなどがみられます。その後は、新しい細胞が増殖するなどしていきます。その際に皮膚に赤みや軽いかゆみの症状がみられます。さらに数週間が経過すると細胞活動は落ち着き、傷跡も肌の色に近づいていくようになります。この過程の間で、物理的な刺激を受け続ける、あるいは遺伝的要因や体質によって、肥厚性瘢痕やケロイドがみられることもあります。その場合、それらに対する治療を行うこともあります。